コミュニケーションの進化への挑戦

不確実性の高い時代になり、当社では2017年度から風土づくり、未来創造会議の取り組みを行って組織のアップデートを図ってきました。
かつての小田急電鉄は、社会の交通インフラを担う鉄道会社として安定成長を続け、人財は「決められたこと、指示されたことをきっちりやりきる」ことを重要視し、コミュニケーションスタイルは必然的に、上意下達の一方通行になりがちでした。

そこで、風土づくりに通じる人財育成施策として、部長級・課長級へのコーチング研修を開始し、トップダウンで方針を落として進める経営ではなく、社員の声・従業員みんなの声を基に会社組織をつくっていく経営を目指してきました。

こうした取り組みの中で、部課長と一般社員をつなぐ役割を担う、 本社の課長代理や現業職場を束ねる現業長も、「外部環境の変化に応じて組織運営のあり方や部下とのコミュニケーションを変化させることが、自身に期待されている」という認識を持っていきました。しかし、具体的にどのような能力開発を行い、どのような行動が期待されているのかを、会社から明確に伝える機会が十分とはいえず、本人の経験を基に各人のマネジメントスキルにより対処せざるを得ない状況でした。

「問い」から始まる私たちの成長

この状況を打開すべく、2022年度より、エキスパートコース(専門職)出身のマネジャーを人と組織の重要なセンターピンと捉え、 彼らを対象としたコーチング研修を開始しました。

1日間×2回の集合研修と、プロコーチとの1on1、さらに受講者同士がペアとなり行うピアコーチングの機会を組み合わせたプログラムとして設計しました。

集合研修の初回と2回目の間には約2ヶ月のインターバルを設定し、その間に上司との1on1を行うことで、受講者自身が職場実践課題を宣言し、上司の支援を受けながら組織に良い影響が与えられる体制を構築します。

集合研修の冒頭では、直属の上司からのメッセージが届けられます。
忙殺される日々の中で、上司との会話は業務の内容に偏りがちですが、改めて上司が受講者本人に期待していることを伝え、受け止める時間を設け、自身をアップデートするきっかけにしています。

更に、同世代のマネジャー同士でディスカッションを行いながら、自身の役割の再確認やコーチングスキルの獲得を目指します。コーチングスキルは汎用性が高く、部下の力を引き出すためだけでなく、上司との対話の中で上司の真意を引き出し理解する、フォロワーシップのスキルとしても活用することができます。

プロコーチとの1on1では、「問い」を投げかけられ、考え抜く経験をすることによって、自身の行動の方向性をより深く考察することができると共に、自身に期待されている「コーチング」への理解を深めることをねらいとしています。

経営者と社員をつなぐ役割を担うマネジャー職の社員が、人と向き合い、組織の力を引き出すスキルを身につけることで、組織力が高まっていると感じています。

今後も多くの社員が研修を受講し、その効果が組織に広がることで、受講者だけでなく受講者と関わるすべての社員が成長すること、エンゲージメントが高まることを期待しています。成長した社員が価値を生み出し、多様かつ持続的に価値の総和が積みあがることで、当社がアップデートされていくことを確信しています。